日清食品ホールディングスと東京大学が日本初の人口の肉「培養ステーキ肉」の作製に成功しました。
4月1日にニュースとなったことから、一瞬”エイプリルフールのネタなのでは?”勘ぐってしまう人もいたことでしょう。
しかし喜ばしいことにこれは本当にことのようです。
日清食品は2025年3月までに本当にお肉と同じ味、食感を持つ、「培養ステーキ肉」の実現に向けて研究を進めることになりました。
果たして3年後には我々の食卓にこの「培養ステーキ肉」が並んでいるのでしょうか。
今回は「培養ステーキ肉」の作製背景と今後の実現可能性について解説します。
培養肉とは
そもそも培養肉とは何なのか。
読んで字のごとく、細胞を培養して作られたお肉のことです。
動物の肉の細胞を人間が食べられるまで成長させ、お肉とします。
ここで言う肉というのは牛、豚、鶏はもちろん、魚全体も該当します。
今回発表された「培養ステーキ肉」については牛の細胞を用いているようです。
そのため一般的にイメージされる「ステーキ肉」が最終目標となります。
今回日清が発表した「培養ステーキ肉」は何が日本初だったのか。
それは”食べられること”です。
従来の研究では牛の細胞を用いていましたが、それを育てるための素材が研究用のものであれ食用外だったのです。
しかし今回ついにこの問題が解決されました。
「食用血栓」と「食用血漿ゲル」を開発したことで完全に食べらえる物としてお肉を培養することを実現したのです。
「食用血栓」とは細胞を育てる養分。
そして「食用血漿ゲル」とはお肉の土台部分。
これと牛の細胞を合わせることで「培養ステーキ肉」が完成するのです。
ちなみに海外では既にこの培養肉を一般販売する国も存在します。
シンガポールは2020年よりシンガポール国内のレストランにて培養肉を使用したメニューの販売を開始しました。
これに先立ちシンガポール政府は国内にて培養肉の販売を承認しています。
培養肉の販売はこれが世界発の試みであり、国としても培養肉の重要性を認識しての判断といえます。
この他2021年には世界的俳優であるレオナルド・デカプリオが培養肉の製造会社に投資を表明したことで大きな話題となりました。
今まさに正解中で培養肉の存在についての重要性が高まっているといえるでしょう。
食肉不足の切り札となるか
ではなぜ「培養ステーキ肉」の開発を行うのか。
それは来るべき食肉不足に備えるためです。
食肉需要は年々高まっており、その需要は国連食糧農業機関 (国連機関の一つであり、世界より飢餓が撲滅を目的とする) によると2050年には2007年比で1.8倍になると予想されています。
さらにお肉となる家畜を育てるためにはエサや水、土地といった資源が必要となります。
また、その過程において温室効果ガスを排出することから環境面での問題も課題となっています。
こうした食糧不足、資源、環境対策のためにもお肉を人工的に作製する、というのは大きな価値を持っているといえます。
この他、家畜を殺生する必要がないことから倫理的な問題の解決にも繋がります。
この他、宗教的、体質的にお肉を食べることが出来ない場合であっても培養肉であれば食用可能になる、といった副次的な期待もできることでしょう。
日清は2017年より動いていた
こうした背景のもと、日清は東京大学の研究チームと共に2017年より活動を開始しています。
元々この研究チームでは培養細胞に関する研究を行っていたが、その先進性の高さから周囲の評価は低く、苦しい思いをされていたようです。
しかし日清より共同開発のオファーがあり、今日の結果に繋がりました。
研究チームの技術力の高さもすごいですが、それ評価し、パートナーとして日清も流石といったところでしょう。
共同活動を開始してわずか2年後の2019年には世界初のサイコロステーキ上の培養肉の作製にも成功しました。
培養肉は通常平面上に培養するが、これを立体的にすることでサイコロステーキ上の培養肉が出来上がったのです。
これは肉の食感に近づく大きな進歩と言えるでしょう。
日清と東京大学の研究詳細については専用のサイトをご確認ください。
培養肉の課題点
さて、希望に満ち溢れた培養肉ですが、課題点が当然あります。
- 味の、食感などの品質
- 培養したものを食べる嫌悪感
- 培養肉作製のコスト
- 畜産農家の縮小化
- 低品質な培養肉の危険性
・味の、食感などの品質
なんといっても味の問題はどうしてもつきまといます。
現在本物の肉を日清は目指しています。
将来的には限りなく本物に近いお肉となることが期待できる一方、それでも本物には及ばない可能性があります。
これについては是が非でも日清に期待したいところです。
・培養したものを食べる嫌悪感
味や安全性の問題がクリアしたところでどうしても一定の嫌悪感、というものは残るでしょう。
培養する、といった表現からも想像できるようにどうしても食品ではなく、科学物質というイメージがぬぐえません。
しかしこれも時間と共に解決するのではないでしょうか。
一般家庭の浸透するころには気にせず口にいれている未来となっていることでしょう。
・培養肉作製のコスト
実際のお肉の生産と比べ培養肉の作製にはそれ以上にコストが発生する可能性があります。
一方でこれも培養技術の発展や国からのバックアップなどにより将来的には解決できる問題かと思われます。
・畜産農家の縮小化
培養肉が浸透することで困るのが畜産農家ではないでしょうか。
これまで食用として生産されてきた牛や豚などの畜産が減少、または規制される可能性があります。
一方で培養肉との共存という可能性も十分に考えられます。
培養肉という新たな選択肢を得たことにより、相対的に本物の肉の価値が上がる可能性を秘めています。
・低品質な培養肉の危険性
省ら的に培養肉作製の技術が多くの企業で一般化された場合、そこには市場の競争原理が働くことになります。
より品質の高いものを安く、が期待できる一方、口にするのに問題がある品質の培養肉が出現する可能性があります。
こうしたことを見越し、培養肉の作製にはしっかりとした法整備が必要と考えられます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
我々が培養肉を食べる未来はもうそこまで迫ってきています。
いざ実食となった際、皆さんは素直に食べることができるでしょうか。
培養肉だけではなく、今後多くの食品についても人工的に作られる可能性があります。
こうした未来がいつ来てもいいようにこれらについての知識をしっかり持ち、備えたいですね。
まずはともあれ日清の今後の動向に注目です。
- 日清は2025年3月までに「培養ステーキ肉」の実現を目指す
- 海外では既に培養肉の一般販売が開始されている
- 培養肉は食糧不足問題解決の一手
- 培養肉の課題点は多いものの解決策は存在する