働き方改革は公務員にも広がっています。
業務負担が大きい業種として、中学校教師があげられるでしょう。
通常の授業に加え、部活動の顧問を兼ねている教師も少なくありません。
これによって平日はもちろん、放課後、休日までもの時間が奪われることになります。
これにより教師は疲労困憊。
疲労による休職も増えてきました。
こうした現状を打破するためにも新たな働き方が求められます。
その一環としてスポーツ庁が推進するのが、部活動顧問の外部委託です。
今回は外部委託による影響についてまとめました。
教師は忙しい
文部科学省によると、精神疾患による教師の休職率は毎年5,000人ほど存在します。
一時は減少傾向にあったものの、近年になり右肩上がりとなってきました。
原因はさまざまですが、なんともいってもストレス、身心の疲労が最も大きなものと考えられます。
教師は通常の授業時間以外にも数多くの業務をこなします。
授業の準備、勉強以外での年間行事の計画、保護者への対応、学校外での生徒指導等、表向きには見えない名もなく雑務が多岐にわたります。
そしてその最たるものが部活動の顧問です。
顧問となると、放課後はもちろん、土日祝日にも練習、試合に駆り出されます。
昨今では生徒側の身心のケアを考え、1週間に一度は部活動を禁止している学校も増えてきました。
それでもなお、顧問の仕事は大きな負担となっています。
日々の業務に加え、顧問の仕事ものしかかってくるとなれば、いったい教師はいつ休むことができるのでしょうか。
休職率増えるのも無理はありません。
顧問は教師の仕事なのか
顧問は通常、その学校内に所属する教師が務めることが大半です。
特に公立学校の場合、学校から命令された場合には「職務の一環」として教師側は断ることができない、というのが一般的な考えです。
仮にその分野の素人であっても校長などいわゆる上司にあたる存在から命令された場合には逆らうことは難しいでしょう。
また、他の教師は顧問を受け持っており、自分だけやらない、というのは居心地の悪さを感じることでしょう。
こうした理不尽な命令、同調圧力によって、顧問が生まれるのです。
※もっとも、自発的、好きで顧問を引き受ける教師もいることでしょう
しかし実際のところこの考えは必ずしも正しいわけではありません。
学習指導要領や法律において「部活顧問」の業務についての記載は一切ありません。
そのため、顧問は教師の業務である、とは言えないのです。
また、仮に業務であった場合でも業務時間外(特に休日)であればそれは業務に含まれません。
仮に命令された場合であっても時間外手当、いわゆる残業を支給しなければならないことでしょう。
しかし実際にはそういったケースはほぼ存在せず、教師の善意によって現在はなんとか成り立っている、というのが現状でしょう。
外部委託の概要
こうした現状を打開するため、スポーツ庁は「働き方改革」の一環として打ち出したのが、顧問の外部委託化です。
学校内の教師に頼るのではなく、地域のスポーツクラブや元プロ選手、部活動のOB・OGなどに仕事(またはボランティア)として依頼するという方法です。
ただし全面的に依頼する、というのではなく、例えば平日週2回や休日といった部分的な依頼となります。
教師の負担軽減を考えれば全面的に委託するのが理想ですが、それも難しいでしょう。
最も懸念されるのが委託費用の発生です。
仕事として依頼する以上、そこには金銭のやり取りが必須です。
これは全面的に依頼することになればその負担費用は計り知れないことでしょう。
次に懸念されるのが、人材不足です。
顧問として向かい入れるだけの知識や実績をもち、なおかつほぼ毎日、部活動の指導に時間を割ける人を探し当てるのは困難でしょう。
以上の2点より、部分的な委託で進めることが最も現実的な提案と言えます。
例えば休日だけでも委託することで、教師はしっかりと安定的な休みをとることが期待できます。
外部委託によるメリット・デメリット
外部委託の効果は教師がしっかり休養をとれる以外にもさまざまな点でメリットが存在します。
<メリット>
- その道のプロの指導を受けることができる
- 第三者として、別の視点からの指導を受けることができる
- 教師の急な不在や転勤時においても部活動を安定して続けられる
最大のメリットはなんといっても、プロやその道に精通した人からの指導を受けることができる点でしょう。
名前ばかりの教師が顧問をしていることも珍しくありません。
学校内での教師の人員不足などにより、経験のない部活であっても顧問をしなければならないことは決して珍しくありません。
これは教師、生徒共に不幸なことです。
これが解消されるだけでも大きなメリットでしょう。
部活動としてのレベルアップがおおきに期待できます。
この他教師不在時の間、外部顧問が代行することで部活動を持続させることが可能となります。
一方でデメリットも当然存在します。
- 指導料が発生する
- 緊急時における責任の所在があいまいになる
- 教師との連携、関係性が良好でない場合、逆に非効率になる
なんといっても最大のネット区は指導料が発生することです。
学校側でこれをまかなうのであればまだマシかもしれません。
しかし場合によっては部活動に所属する生徒の保護者が負担する例も存在します。
そうなった場合、これを支払うことができない生徒は部活動に参加することができなくなります。
結果「機械の平等」が奪われることになり、学校教育への否定にもなりかねません。
国が外部委託を後押しする場合にはこの面についてしっかり補助していく必要があります。
この他気になる点としては、外部顧問と教師との連携です。
両者の関係が良好であれば問題ありませんが、なかには指導に対する考え方が異なる場合によって対立する可能性も否定できません。
さらに部活中の不慮の事故が発生した場合など、監督、指導者としての責任が問われる際には、その所在があいまいになることも懸念されます。
もちろん、両者が一体となり、協力関係を築き上げることができればこうした問題は解消されます。
部活動を効率的に、そして効果的な練習などを実施するためにもこの点については最も重視すべき点であることは間違いありません。
まとめ
いかがだったでしょうか。
教師の負担軽減はもちろん、他の点においても外部委託というのは一考に値するのではないでしょうか。
もちろん同時にデメリットも存在することは事実です。
しかしこうしたデメリット、課題を解消することができればより生徒たちが充実した部活動の時間を過ごすことができるでしょう。
今後の教育現場がどのような動きをみせるか引き続き動向を注視すべきです。
- 部活動の顧問は教師にとって大きな負担となっている
- スポーツ庁は顧問の外部委託について検討している
- 外部委託により、より高度で効果的な部活動ができる
- 指導料、顧問同士の連携がとれていなければ逆効果になる