現在の戸籍法において指名の読み仮名欄は存在しません。
そのため通常では読みづらい珍しい名前、いわゆるキラキラネームをつけることができました。
このキラキラネームについて今後の考え方が変わる可能性が出てきました。
法務省は2022年5月17日の法制審議会にて戸籍の氏名に読み仮名を付ける中間試案をまとめました。
読み仮名が戸籍に必須となった場合、どのような影響が出るのか調査しました。
戸籍上は読み仮名不要
戸籍上、読み仮名の項目はありません。
そのため、親は子供の名前に対して自由な読み仮名をつけることができます。
命名について、戸籍法52、56条に規定されています。
それによると氏名は両親その他、出生届の出す対象者が命名したものがその子供の名前となります。
氏名の表記には漢字、ひらがな、カタカナの計2900文字より自由に組み合すことが可能です。
しかしその読み方について制限はされません。
両親がこの読み方と決めてしまえばそれがまかりとおるのです。
一方で出生届けをはじめとした公式的な書類上においては読み仮名は必須となっています。
そのため現状において氏名を規定する戸籍のみが読み仮名表記のない、マイノリティーな存在なっているです。
読み仮名が自由に規定できる一方さまざまな弊害が発生しています。
こうした事態に対応するため、これまで読み仮名を表記する案が度々出ていました。
キラキラネームによる弊害
今鹿(なうしか)、光宙(ぴかちゅう)、大空(すかい)。
多種多様なキラキラネームが存在しますが、いずれも共通するのは第三者にはまず初見で読むことができないほどの難解である、という点です。
漢字の意味からとったもの、英語読みするものなどさまざま。
当て字になっておらず、発想力を問われるちょっとしたクイズです。
学校の先生などは生徒の名前を呼ぶ際、さぞかし苦労することでしょう。
直接本人を呼ぶだけであればまだマシかもしれません。
一度顔と名前を覚えれば次から間違えなければよいだけです。
出席簿にフリガナを追記するだけで解決します。
一方問題なのがやはり書類上での扱いです。
上記の通り出席届けはもちろん、銀行口座や住民基本台帳など、公式的な書類上でも読み仮名の表記は必須です。
しかし戸籍には読み仮名が存在しないためこれらの情報と照合する際、容易でなくなります。
政府など行政機関としては個人情報を可能な限り統一管理できるよう日々模索しています。
そのためこうした照合作業を容易にし、運用管理を簡素化することが求められます。
今回議論となっているのもこうした理由が大きいからでしょう。
マイナンバーカードを普及、活用させたい政府としても個人情報をしっかり紐づけることは大きな課題となっています。
もちろん、最も弊害となっているのはキラキラネームをつけられた本人です。
キラキラネームが浸透している昨今、これも個性の一つとして世間には受け入れられています。
一方でキラキラネームをつけらた子供がやがて名前にコンプレックスをもつ日がくる可能性があります。
自分の性格や容姿など自身のパーソナル情報とはかけ離れた名前。
アニメキャラクター由来の名前で羞恥心をおぼえるなど、理由はさまざまです。
また、キラキラネームに理解のない人も一定数存在する以上、それによって不当な扱いを受ける可能性も否定できません。
人によっては大人になった際、名前を変更する人も出てきています。
このように第三者としての目的はもちろん、子供本人のためにも現在のキラキラネームについては見直さなければならない事態に直面しているといえます。
読み仮名必須による課題
さて、戸籍に読み仮名が必須となった場合にどのような課題が出るのでしょうか。
最も注目されるのが、キラキラネームをどこまで許容するか、という点です。
今後の審議の焦点となりますが、複数の基準案が議論されることでしょう。
例えば、読み仮名が漢字の一般的な読み方や字面との関連性がある場合に限り氏名として認める。
このパターンに該当するのは「海」をマリンと呼ぶ場合です。
マリンは英語のMarinから由来しており、漢字から名前を連想することが可能です。
しかし「太郎」をサブロウと読ませる場合にはどうでしょうか。
漢字からでは絶対に連想することができません。
こうしたパターンの場合には読み仮名として認めることができません。
この他、社会的な浸透している、通用している場合であればどのような読み仮名であっても制限しないというケースです。
前述した「太郎」について国内でサブロウとして多くの人が認識しているのであればこれを認めるというパターンです。
そして最もシンプルなのが、制限しない。
ただし道徳的、一般的なものに限る、ということです。
口に出すことがはばかられるような読み仮名や子供が将来不利益を被るような読み仮名さえつけなければOKという考え方です。
この場合であれば氏名を付ける親側はこれまで通り、制限を受けることはありません。
しかしこれでは政府が目的とする、氏名の紐づけ、情報の統一、管理の簡素化といった点を達成することが困難です。
よって社会的な影響、メリット、デメリットを考慮し今後これらの基準は決定されるものと考えられます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
キラキラネームの問題について、対応する瞬間が刻一刻と近づいてきました。
誰もが納得するような結果になることは難しいことでしょう。
しかし優先すべきはキラキラネームをもつ本人、子供達が不利益を受けることなく、社会生活を送る未来になることでしょう。
- 戸籍には読み仮名の記入欄が存在しない
- 戸籍に読み仮名の記入欄を追記することが議論されている
- 読み仮名追記により、個人情報紐づけが容易となる
- キラキラネームは本人はもちろん、行政機関も個人の特定、紐づけに苦慮している
- 読み仮名追記によっては氏名に制限が発生する可能性がある