4,630万円の行方はいかに もし自分が給付金をうけとってしまった場合どうする?

自身の口座に4,630万が振り込まれたら、皆さんはどうしますか?

日本中が注目する4,630万。
はたして無事戻ってくるのでしょうか。
気になるのは今回のように誤って振り込まれたお金をそのまま自分のものとした場合、どのような処罰を受けるのか。
この件についてネット上では様々な意見が飛び交っています。
これらの意見を参考に4,630万円の行方と受け取った人物像についてまとめてみました。

10万円が4,630万円になった経緯

まず今回の事件の概要を振り返りましょう。
事の起こりはる臨時特別給付金のご振り込みでした。
いわゆるコロナ給付金と呼ばれるものであり、お住いの市役所等に行政機関より該当世帯に対する給付金が支給されるというものです。
給付額は1世帯あたり10万円です。
今回、山口県阿武町では463世帯に対して10万円を給付するところを、1世帯に対して4,630万円を誤って振り込んでしまいました。
世帯と給付額の数値が逆転してしまったようです。
これは割とありがちな人的ミスです。
数値の逆転という点だけをみれば、類似した過去のケースではジェイコム株ご発注事件、というものがあります。
本来1株61万円で売り注文すべきところを、誤って1円61万株の売り注文としてしまったのです。
結果、150億円以上の被害を出すなど、後世にも残る大事件となりました。
この件もそうですが、この数字との間違いというのは人的ミスが原因となります。
どれだけシステム化されようとも、こうした数字の入力については最終的には人がやらなければなりません。
今回、阿武町職員がどのような手順にて振込作業を行ったかは明らかにされていません。
で職員側のミスであることを認めていることから、何らかの手違いがあったものと思われます。
しかし今回のミスの第一発見者は阿武町ではありませんでした。
振り込みが行われた2022年4月8日、銀行から阿武町への確認によって事件が発覚したのです。
その後阿武町と受取人との間で様々な交渉があったようですが、最終的には受取人が、返金を拒否、現在阿武町職員側としては訴訟することを視野に動いているようです。
本来このように誤った入金が行った場合にはそれを取り消しすることができる”組み戻し”という処理があります。
これは受取人が入金の取り消しを了承することではじめて可能となります。
この際、振込者(阿武町)→振込元の銀行→振込先の銀行→受取人という流れで交渉することになり、当人同士で直接のやり取りができません。
阿武町側も当初はこの組み戻しを提案、受取人もそれに了承したようですが、実施に至らなかったようです。
組み戻しについては当然拒否することはできますが、今回のように明らかな入金ミス、それも大金の場合には了承されてしかるべきところです。
そして最終的には受取人より「入金されたお金は動かしている」「もう元には戻せない」「罪は償います」など返還に応じる意志がない発言があったとのことです。

これを受けて阿武町は現在、警察、弁護士と相談し、対応を協議しているとのことです。

なお幸いなことに本来給付すべき世帯への10万円については問題なく入金が完了されているとのことです。
こちらについては一安心ですね。

臨時特別給付金の対象の”住民税非課税世帯”とは

返還する意思はないものの、罪を認めているなど、潔いのか悪いのか判断に困るような受取人です。
受取人がどのような人物が誰もが気にあるところです。
阿武町はこの人物の特定に繋がる情報について、当然ながら公表していません。
そこでその人物像を知るための情報の一つとしてあげられるのが、今回の給付条件の世帯です。
コロナ給付金は”住民税非課税世帯”が対象となっています。
ではこの”住民税非課税世帯”とは具体的にどのような世帯をさすのでしょうか。

  • 年間の所得が35万円以下
  • 生活保護受給者
  • 障害者・未成年者・寡婦(寡夫)で合計所得金額が135万円以下

大まかには以上の3点のいずれかを満たす世帯が対象のようです。
”住民税非課税世帯”とはそのままの意味の通り、住民税が非課税となる世帯をさします。
住民税は所得に応じて課税されるため、一定の所得以下の場合については非課税となります。
よって上記のように一定の収入を得ることが困難な世帯が対象となるのです。
今回の給付金についてはこうした生活困窮者を救済する意味合いが強いことから、ある種当然の対象範囲といえます。

受け取った人物はどんな人

給付金の対象が分かったことで、今回4,630万円を受け取った人物像が少しは見えてきたのではないでしょうか。
少なくとも、受け取った人は金銭面において生活に余裕があるとは考えづらいと思われます。
そのため、ある日突然大金が舞い込んできた場合、その行動はどうなるでしょうか。
魔が差してそのまま着服する、という気持ちにもなるかもしれません。
ましてや4,630万円です。
例えば生活保護受給費が1ヶ月あたり10万円であった場合、約38年間分がまとめて入金されてきた感覚となります。
仮に20歳で受け取った場合であっても以降は生活保護とこの4,630万円で日々の生活を送ることが可能かもしれません。
それどころか、少しゆとりのある生活すら可能となるでしょう。
特に年齢が高ければ高いだけ、その可能性は高まります。
仮に50歳以上であれば悠々自適な暮らしが約束されるのではないでしょうか。
老後2,000万円問題も楽々乗り越えられます。

そしておそらくこの受取人はある程度年齢が高い可能性があります。
少なくても20、30歳代ではないでしょう。
返還する意思はないものの、罪は償うという発言より、罪の自覚があるように思えます。
そしてその処罰を受ける覚悟もあるようです。
大金とはいえ、通常、社会的に罰を受けた場合の影響度合いはそれ以上の被害となる場合が大きくなる可能性があります。
刑事訴訟となった場合には特に会社勤めのサラリーマンの場合、懲戒解雇はまぬがれないでしょう。
結果、今後将来的に得られるはずであった4,000万以上の給与がパーとなります。
さらにその後の転職も影響がでる可能性もあります。
とはいえ、まだ若い20代、30代であれば立て直しができるチャンスは残っているものです。
そのチャンスを捨ててまで、4,630万円を求めるというのであればそもそもそのチャンスすら残されていないある程度年齢が高い人物の可能性があります(若者でも何らかの理由により働くことができない、という可能性もありますが)。

また、そもそも今回のように住民税非課税対象者であった場合、正規の仕事に就いていない可能性があります。
そのため、刑事訴訟となった場合であっても会社をクビになるといったリスクは少ないことでしょう。
よって最終的に重要となるのは訴訟された際の賠償や、刑事罰がどれほどになるか、という点が焦点となります。

2022/05/12更新
阿武町は、受取人の本名を含め、個人情報を公表しました。
24歳男性であることことです。
阿武町に1年半前に空きやバンク制度によって引っ越してきました。
予想の反して、若者であることが判明しました。
一方で空きやバンク制度を利用していることから生活に余裕があるとは言えない可能性は残ります。
既に現在の家を離れ、行方がわからなくなっているようです。

罪に問えるか、訴訟も検討

では今後、この受取人がどのような罪に問われ、罰を受けるのでしょうか。
YAHOO!ニュースでは弁護士を中心に専門家が様々な持論を展開しています。
そしてその多くが共通して民法703条に”不当利得返還請求”に違反するとのことです。

「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

と規定されています。
簡単にいってしまえば、被害者である阿武町が受取人によって損失を受けたため、受取人はその損失に対して、返還義務が発生する、というようです。
今回、阿武町側のミスによって誤振り込みされましたが、”法律上の原因なく”不当に得た利益に該当するのが根拠となります。
よって、受取人は民事訴訟された場合には手元に残っている利益を返還する必要があります。
逆にすでに使ってしまった分については返還する必要がないということですね。
しかしこれに加え、民法第704条の”悪意の受益者”に該当した場合にはその限りではありません。
ようは悪意をもって不当に得た利益の場合には全額に加え、利息を付けて返還しなければいけなくなります。
この民法第704が適応されるかどうかが一つのカギではないでしょうか。
受取人の言動より、偶然受け取ったとはいえ、その後言動は計画的にも思えます。
これが悪意がある、かどうかが焦点でしょう。
また、刑事上においても横領罪が考えらえるようです。
横領罪となると「10年以下の懲役」となります。
これは窃盗や詐欺、恐喝と同じ懲役年数です。
受取人はこれも覚悟の上での判断だったのでしょうか。

阿武町が今後どこまで踏み込み、法廷に訴えるのかが注目されます。
この阿武町側の動きをみて、受取人が心変わりしてくれることを願うばかりです。

※2022/5/12更新
町議会臨時会を開き、阿武町が受取人へ返還を求め提訴することが決まりました。
弁護士費用や調査にかかった実費も含めて、約5116万円の支払いを求めるとのこと。

まとめ

いかがだったでしょうか。
大金が振り込まれたからといってそのままネコババしては思わぬ事件に発展する可能性があります。
特に今回は大金であり受取人の言動から計画性の高さもうかがえます。
阿武町とししてはこのまま泣き寝入り、というわけにもいかないことでしょう。
何よりこの損失は市役所ではなく、最終的には阿武町に住む市民が税金として負担することになります。
市役所の面目を保つ、信頼性を回復させるためにも何としてでも返還されなければなりません。
今後のどのような展開となるか、続報が期待されます。

  • 受取人は返還の意思はなく、罪を償う意向を示している
  • 住民税非課税対象者であることから、受取人は金銭的余裕がない可能性が高い
  • 今後阿武町は訴訟を視野に対応を検討する
  • 民法703条に”不当利得返還請求”が適用されるかがカギ
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