2022年6月より義務化、犬猫へのマイクロチップ装着について解説

コロナ禍により一人暮らしを中心に、ペットを飼う人が増えています。
今も変わらず犬、猫は大変人気ではありますが、これらの飼い主にとって無視できない法律が2022年6月より施行されようとしています。

犬猫へのマイクロチップ装着が義務化となりました。

マイクロチップ装着が義務化されたことでどのようなメリットがあるのか。
既にお家で犬猫を飼っている家庭など、義務化の対象となる範囲はどこか。
現在犬猫を飼っている人も、これから飼おうと検討している人も疑問がつきないことでしょう。
今回はそんな皆さんが気になる疑問点を中心に解説します。

この機会に今一度犬猫との付き合い方について考える機会となれば幸いです。

マイクロチップとは

今回装着するマイクロチップは直径2mm、長さ12mほどの電子器具です。
この電子器具に個体識別番号を記録することになります。
個体識別番号は正解で唯一の15桁からなる数字です。
この数字と紐づく飼い主の情報をあらかじめ登録することになります。

登録情報は、飼い主の指名、住所、電話番号となります。
登録情報は公益社団法人日本獣医師会が管理、運営します。
これによって犬や猫の飼い主が瞬時に判別することになり、さまざまなメリットを生み出すことに繋がるのです。

気になるのはその装着方法です。
装着するのは獣医師が行います。
専用の注射器を使用し、首の周囲皮膚下に埋め込むのです。
痛みは少ないようで、通常の医療行為で行わる注射と同じぐらい、とのこと。

飼い主としてはやはり犬や猫が苦しむ姿を見たくはないですよね。
これならば少しは安心できるのではないでしょうか。
しかし装着に伴う影響なども考えられることでしょう。
これについて後述で触れたいと思います。

義務化の背景

マイクロチップ装着の背景にはどういった議論があったのでしょうか。
環境省によりますと、2020年度、何らかの理由により自治体に引き取られた犬と猫は約74,000匹。
殺処分されたのは約24,000匹にのぼります。

飼い主の飼育放棄や迷子、多頭飼いによる飼育崩壊、ペット業者による大量出産などその理由はさまざまです。
こうした事態に対応すべく、犬猫の飼い主を明確にしよう、というのが今回の目的となります。
飼い主が誰であるか判明するだけで迷子の犬猫は救われることでしょう。
特に昨今の国内における地震、洪水といった天災に伴い、飼い主とペットが離れ離れとなるケースが後を絶ちません。
こうした悪意のない飼い主にとっては大変ありがたい制度となることが期待されています。
一方で身勝手な多頭飼い、飼育放棄、悪質業者によるペットの大量出産への抑止としても効果的です。
これらの飼い主、業者へ責任者としての自覚を促すこと。
そしてもしもの時にその責任を問える体制が可能となります。

ちなみに海外の一部では既にこの義務化が始まっています。
ヨーロッパを中心にアジア圏にも拡大しつつあります。

もはや犬猫はただのペットではありません。
人と共に歩む大事な家族の一員です。
不幸な犬猫を生まれないようにするためにもこうした取り組みが急務となっています。

装着~情報登録までの流れ

ここからは具体的なマイクロチップの装着から情報登録の流れについてみていきましょう。
以下は犬猫繁殖業者(以下、ブリーダー)がペットショップに犬猫をおろし、それを飼い主となる人が購入した場合の流れとなります。

  1. ブリーダー:獣医師にマイクロチップの装着を依頼
  2. ブリーダー:装着完了後、登録申請機関(公益社団法人日本獣医師会)に登録申請
  3. ブリーダー:ペットショップへ犬猫と共に登録証明書を譲渡
  4. ペットショップ:所有者情報変更のため登録申請機関に申請
  5. ペットショップ:犬猫と共に飼い主へ登録証明書を譲渡
  6. 飼い主:所有者情報変更のため登録申請機関に申請

ざっくりとした流れは上記の通りです。
詳細は環境省発行の下記資料をご覧ください。
犬猫所有者のマイクロチップ装着・情報登録の流れ

マイクロチップの装着、初期の申請登録についてはブリーダーが行います。
その後、ペットショップや飼い主など、犬猫の所有権(こんな言い方はしたくないですが)が移り変わるたびに譲渡された側が新たに登録情報の変更申請を行う、という流れです。
そのため、2022年6月にペットショップで犬猫を購入する飼い主は以下のタイミングで申請が必要となります。

  • 犬猫の購入時
  • 犬猫を別の飼い主に譲渡する時
  • 飼い主の住所、氏名変更時
  • 犬猫の死亡時

犬猫の飼い主が変わる場合と飼い主自身の個人情報が変わる場合に変更が必要、ということを覚えておきましょう。

登録について

登録方法について2022年3月現在判明しているの以下の通りです。
今後より詳細な対応方法について環境省より発表があるためそれを待ちましょう。

  • 登録先の指定登録機関は「公益社団法人日本獣医師会」
  • 登録方法はオンラインまたは登録機関での紙での申請方法がある
  • 申請後、登録証明書が発行されるため飼い主はこれを保管しなければならない
  • 登録料はオンライン申請で300円、紙申請で1,000円
  • 登録した情報は自治体、警察のみアクセスできる

より詳細な内容については環境省の専用サイトをご確認ください。
犬猫を飼っている人、これから飼う人は必ずチェックすることをおススメします。

既に犬猫を飼っている場合

これまではペットショップで購入した場合の話でした。
一方、既に犬猫を飼っている人はどうなるのでしょうか。

結論、マイクロチップ装着は努力義務のため、必須ではありません。

また、ペットショップからではなく、知人や動物保護団体から譲渡された場合も同様です。
環境省としてはマイクロチップ装着を推奨していますが、必須ではありません。
ただし譲渡された際、既にマイクロチップが装着されていた場合には登録証明書を合わせて譲渡してもらう必要があります。
また、その後登録機関への飼い主変更に伴う登録情報の変更申請を行わなければなりません。

このようにペットショップとそれ以外からの犬猫の受け渡しについて、マイクロチップ装着の必要有無が異なります。
ただし今後はこれも統一かされる可能性が高いと思われます。
現状ではマイクロチップ装着が必要でなかったとしても将来的には全ての飼い犬猫へマイクロチップ装着が必須となる可能性は十分にあります。
後述するマイクロチップ装着に伴うメリット、デメリットを加味したうえで装着することを検討してみてください。

なお6月から始まるマイクロチップ装着義務化とは別に、既に民間レベルで実施してるマイクロチップが存在します。
こちらについても環境省手動のマイクロチップに移行する流れとなります。
該当する場合には以下のサイトをチェックしましょう。

犬と猫のマイクロチップ情報登録 環境省データベースへの移行登録受付サイト

マイクロチップ装着によるメリット、デメリット

ここからはマイクロチップ装着に伴う、メリット、デメリットをあげていきます。
マイクロチップ装着が努力義務の飼い主であってもマイクロチップの有効性を加味したうえで装着することを検討してみてください。

<メリット>

  • 迷子や天災によって飼い主と離ればなれとなった犬猫に対して行政機関が飼い主を特定できる
  • 犬猫を捨てる飼い主が減少する
  • 悪徳業者、ブリーダー、による無計画な大量繁殖を抑制する

飼い主にとっての最大のメリットは犬猫が行方不明となった場合、発見できる可能性が飛躍的に高まる、という点でしょう。
犬猫がどこかの誰かに拾われたとしてもその飼い主が不明なのは珍しくありません。
保護した人が飼い主を特定できようになればすぐに飼い主のもとに戻ることができるでしょう。
あとの2点については犬猫に自身のメリットともいえます。
飼い主が誰か紐づけされているため、むやみに増やしたり、捨てたりすることが難しくなります。
こうした不幸な犬猫を増やさないというのが何よりのメリットではないでしょうか。

<デメリット>

  • マイクロチップ装着に伴う労力
  • 装着された犬猫への影響
  • 登録する際の手間が発生
  • 登録料の発生
  • マイクロチップ装着有無による差別化

デメリットとして、ブリーダー、ペットショップ、飼い主全てに対してマイクロチップ装着、登録の作業が発生します。
また、マイクロチップ装着時には獣医師のみが対象できるため、業務圧迫化の懸念もあります。
飼い主に至っては自身の引っ越しや結婚などによりその都度申請しなおす必要があり、手間も登録料も負担となります。
制度面以外では、装着された犬猫への影響です。
体内に受け込むため、安全性は当然担保されていなければなりません。
当然ですが健康への影響はないと考えられています。
しかしMRI検査など一部の器具との相性が悪く、正確に診断できない場合もあるようです。
こうした影響が他の場面でも発生しないことを祈るばかりです。
最後に、マイクロチップ装着有無によって、行政における対応方法が今後異なる可能性が出てくる、という点です。
例えばマイクロチップ装着を促進するため、装着した犬猫の病院代について補助がでるなどの金銭的な優遇措置が考えられます。
また、マイクロチップ装着の犬猫が保健所に収容された際、未装着の犬猫と比べ、収容期間が異なるといった場合です。
現在のところこうした装着有無による差別化は発生しないようですが今後の動きによっては可能性がゼロとはいえません。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回の法令ではあくまでも一部の犬猫が対象となります。
しかし将来的には全てに犬猫がマイクロチップを装着することになるでしょう。
犬猫はもちろん、飼い主も不幸としないため、こうした動物保護に関する法令は積極的に進めて欲しいところです。
犬猫の体内に異物を挿入する、という点で飼い主としてはかなりの抵抗があることが予想されます。
筆者自身もその考えです。
しかし一方で”やっておけばよかった”と後悔する日がくるかもしれません。
現状努力義務であれば施行された際の様子を見つつ、装着することを前向きに考えてみてもよいのではないでしょうか。
それが正体的に犬猫の幸福のためと考えれば、飼い主の心情は二の次でもよいかもしれません。
最も、装着に伴う健康被害など、デメリット面についても注視することを忘れてはいけません。

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