小学生が考案したランドセルの補助装置「さんぽセル」について記憶に新しいと思います。
ランドセルを背負う負担を少しでもなんとかしようと小学生自らが立ち上がり、実現させた事例として多くのメディアで紹介されました。
※こちらの件について過去の記事をご覧ください
これは称賛されるべきものであると同時に大人たちもこの問題に取り組まなけばならないと気づかされた良いきっかけとなったでしょうか。
そんなランドセル業界ですがとある地域において最軽量、高機能のランドセルが無料で配布されていることをご存じでしょうか。
子供達も頑張っていますが、大人たちも実は頑張っているというところを今回は紹介します。
約50年前より行われている伝統
ランドセルといえば年々高機能、デザイン性の高いものが続々発売されており、同時に高額商品として保護者の頭を悩ませる種ともなっています。
ランドセル工業会の調査によると2022年4月入学のランドセル平均価格は約56,000円とのこと。
数年前より50,000円台を推移しており今回ついに55,000円を超える過去最高平均額となりました。
人によってはおじいちゃん、おばあちゃんに買ってもらう場合も少なくないでしょう。
それでも高額であることには変わりません。
もしこれが無料でプレゼントされるならこれほどうれしいことはないのではないでしょうか。
それを実現するのが茨城県にある日立市です。
総合電機メーカー「日立製作所」創業の地として有名な市ですね。
なんとこの日立は1975年より市内の小学校新1年生を対象に毎年ランドセルを無料配布しているというのです。
配布されるランドセルは黒、赤2色のベーシックな一見普通の物となります。
しかしその重さはわずか550gとランドセルとしては最軽量ともいえる軽さを誇ります。
通常のランドセルの場合平均1.3kgの重さであるためその半分以下というのは驚異的です。
また、色については男女関係なくどちらも選択することも可能であり昨今の多様性にも即したかたちとなっています。
※ランドセルの詳細については日立市教育委員会HPをご参照ください
また、当然ですが、自身で購入したランドセルを使用することももちろん可能であり、使用の強制はありません。
ただし保護者を中心に過去の利用者からは好評とのこと。
市外からこのランドセルを求めてやってくる人もいるほど、だとか。
※購入を希望される場合には「日立市カバン袋物同業組合」へお問い合わせください
無料配布だけでなく機能としても優れており、市外の人からすると本当に羨ましい限りです。
そんなランドセルですがそもそもなぜ無料配布することになったのでしょうか。
すべては子供たちのため
ことの始まりは1975年に発生したオイルショックによります。
各家庭が経済的に苦しい中、市としその負担を軽減しようと考えたのが全ての始まりでした。
小学校は義務教育であり、家庭環境、経済的理由によって子供学校生活を妨げてはならない、という想いが現在まで根付いているようです。
この考えのもと、同市は2020年からは中学生のスクールカバンの無料配布も開始しています。
こちらも市民からは好評とのことで、少しずつこうした輪が広がっているようです。
全国に広がることを望む一方課題も
さてこうした取り組みについて全国でも是非実践して欲しいと思ったことでしょう。
義務教育であるのだから必要な備品についても無料であるべきとも考えられます。
そうした意味では将来的に日立市の事例が全国展開されることも可能性として十分に考えられます。
ただし一方で懸念材料も存在します。
それは市としてこうした備品の調達を行うことは特定業者への斡旋となる恐れがあることです。
行政が大々的に動いてしまい、民間のランドセル製造メーカーへ悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
特に昨今では多種多様なランドセルが存在します。
これを行政側で配布してしまうと、製造メーカーとしては痛手となることでしょう。
消費者としては喜ばれる一方、生産者としては手放しに喜べない事情もあります。
こうした問題などを解決したうえでこの取り組みを実現してほしいところですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
日立市に住んでみたくなったのではないでしょうか。
ランドセルだけでなく今後も様々な面より子供への支援を行っていくことが予想されます。
この動きが全国に広がってほしいことを願うばかりです。
一方で単純に備品の無料配布というのは世間、民間企業への影響も考えなければなりません。
とはいえランドセルを求める子供達がいる以上、それは何よりも優先されなければならないことでしょう。
行政として、民間企業としてそして世間として我々が何ができるか改めて考えてみる必要があります。
- 日立市では50年に渡りランドセルを無料配布している
- ランドセルは高性能で軽い
- 子供達を支援する日立市ならではの取り組み
- 全国の広がることを願いつつも課題は山積み